風に揺蕩う物語
シャロンにそう言われてしまうとこれ以上は詮索のしようがない。

リオナスはそのまま黙りこみ、シャロンもまた口を閉ざして、ただヒューゴの顔を心配そうに眺めるだけだった。

そして1週間経ってもヒューゴが目覚める気配はなかった。容体は良くも悪くもならない。

逆にヒューゴの介護を買って出ているシャロンの方が体調を崩してしまっていた。毎日夜になると容体を確認に行き、一刻を待たずにまた様子を見に行くといった事をしていれば当然である。

そんな状態を見かねた医者に睡眠薬を処方され、なんとか眠りにつくといった事をしている。

リオナスもまたヒューゴの容体が気になるのか、1日置きに様子を見に帰ってきていた。

リオナスはヒューゴはもちろん、シャロンの容体も気にしなくてはいけなくなり、非常に疲れた様子で屋敷に帰ってきていた。

そしてある日の昼。それは唐突に起きた。

「…腹減った」

ヒューゴは目を覚ました。開口一番に出た言葉も間が抜けている。

医者も驚きすぎて腰を抜かしている様子だ。まさかこんなにあっさり目を覚ますとは思っていなかったのだろう。

ヒューゴは目の前に居る人物を不審に思いながらもこう言葉を述べる。

「あなたは誰です?」

当然の質問だった。

医者はその問いには答えず、というか答える余裕もなく忙しなくヒューゴの部屋から出ていってしまった。不審人物だなぁとか呑気に考えていたヒューゴは、もう一つの気配を感じてそちらに視線を送る。

換気をしていたのだろう開け放たれた窓際に、あの夜に出会った鷹の存在があったのだ。

鷹はヒューゴと視線を合わすと片翼を上げ、挨拶の様な行動をとったのち、その場から姿を消した。
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