風に揺蕩う物語
ヒューゴは手を差し出し、意識を集中させるとその煙は意図して動かせた。

すなわちこの煙の正体は、夜に自分の体から発せられていた煙と同種類の存在であると仮定出来る。

それを知った日からヒューゴは時間を見つけては町中を歩きまわり、煙の正体を突き止めようと独自に調査を開始していた。

言うまでもなく他の人には一切見えていない代物である。試しに白い煙を体に携えながらシャロンに話しかけてみたが、その煙に気づいている様子はなかった。

色々調べているのだが、正体が分からず、ヒューゴは町の外に出た。するといつも見えている煙とは色が違うものを見つけ、こうしてこんな雑木林まで足を運んでしまったのであった。

これ以上奥に進むと戻れなくなりそうだな…。

さてどうしようか。

日が暮れ始め、そろそろ戻らないと関所の門が閉まってしまうと思いながらも、ヒューゴは緑色の煙の正体を突き止める事を諦めきれなかった。

だがそんなヒューゴの執念が一つの結果をもたらす。

辺りを支配していた緑色の煙が、急に濃くなった。ヒューゴはその場でミアキスから降りると、その場に陣取り辺りの気配を探る。

動物の気配はない。心なしか風も消えている気がする。

恐怖というよりも神聖な気配が辺りを包み、和やかな気持ちをもたらすその空間で、急に羽音が聞こえてきた。

直感的に何者が来たかを理解したヒューゴは、ミアキスをその場に置き、音が聞こえた方向に歩み寄っていく。

やはりと言うべきか、あの礼儀正しい鷹が姿を現した。凛々しい形容を見せる佇まいで、ヒューゴを迎え入れている様な雰囲気である。

「先日はどうも鷹さん。あなたのおかげ助かったよ」

おそらく言葉が通じる。そう思ったヒューゴはそう口にする。
< 129 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop