風に揺蕩う物語
鷹はヒューゴの言葉を聞くと口をパクパクさせ、小気味良い音を響かせている。

当然何を言っているか分からないヒューゴは、苦笑を浮かべる。

「どうやら会話は出来ないようだね…まぁ当然か」

ヒューゴは鷹に近づくと片膝を着く。そして腰に下げてある革袋から干し肉を取り出し口元に持っていく。すると鷹は困った様に首を傾げ、少しの時間を置いてその干し肉を口に銜えると少しずつ咀嚼をし出した。

この鷹は何者なのだろうか。物凄く知りたいのだが、会話が出来ないだけに物凄く歯痒い気分だ。

いっその事この鷹を屋敷で飼おうか。そう思いだしたヒューゴだったが、鷹は羽を羽ばたかせるとそのまま空中にその身を乗り出し、雑木林の奥に姿を消してしまった。

瞬く間に消えてしまった鷹を呆気に取られながら見送ったヒューゴは、仕方ないと頭を切り替えミアキスが待つ場所に戻っていく。

いつの間にか辺りに立ち込めていた緑色の煙は消えていた。

鷹は雑木林の中の一番大きな木の頂上に器用に止まっていた。そして口を大きく開けると、小さく噛み砕かれた干し肉を吐き出す。

そして辺りを見回しながら首を空の方向に向けた。

すると鷹の周りには、先ほどまで広範囲に漂っていた緑色の煙が一点に集まり、渦巻く様に辺りを支配する。

鷹の姿は完全に緑色の煙で見えなくなり、煙がどんどんと濃縮されていく。すると小規模の爆発を思わせる様に煙が弾け飛ぶと鷹の姿は消え、緑色の煙も完全に姿を消した。

後に残るのはいつも通りの雑木林の姿だけだった。
< 130 / 200 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop