風に揺蕩う物語
今度は返事を返したヒューゴだったが、手に持っていた酒瓶を口に運ぶと、一気に口に酒を含んだ。その様子を見たシャロンが慌ててその手を止める。

「このお酒はその様にお飲みになれるお酒ではありません。お止め下さい…」

ヒューゴが手に持っているのは、果実酒ではあるのだが、かなり強い部類に入る酒だった。普段から酒を嗜んでいる訳でもないヒューゴが一気に飲める代物ではない。

そんなシャロンの様子を見たヒューゴは、幾分座った眼をシャロンに向ける。

「お前も酒に付き合えシャロン」

「それはまた後日に致しましょう。今日はもうお酒を飲むのはお控えください」

切実な目をしたシャロンがそう言うと、乱暴に酒を地面に置いたヒューゴ。おそらく乱暴に置くつもりはなかったんだろうが、過度の酒で体の自由を奪われたヒューゴは、力の加減が分からなくなっていた。

その音に驚いたシャロンは小さく悲鳴を上げると、ヒューゴはその様子が気に食わなかったのか、吐き出すように言葉を吐いた。

「俺と酒を飲むのが嫌か?」

「そんな事はありません。ですが、お酒の飲み過ぎは体に毒でございます。お気を確かに…」

平素の彼とはまるで違うその様子に、シャロンは戸惑いながらもそう話した。

呂律はしっかりしているヒューゴだが、視線が刺さるほど鋭かった。シャロンの顔に近づけるように話すヒューゴからは、過度のアルコールの匂いがしており、シャロンは眉間を寄せる。

「お気は確かだよ。でも飲みたりないんだ…綺麗なお月さまがお上りだしな」

「今日は雲ひとつない晴天でしたから、陰りもなく綺麗な三日月がご覧になれましょう…ですがお酒と月夜に何かご関係があるでしょうか?」

「あるとも…月見酒という言葉があるくらいだからな。それに加え今は、見栄えの良い姫が俺の傍に居る」

「ご冗談はお止めください。私よりも見栄えの良い姫君などそれこそ星の数ほどおいででしょう。私の事は私がよく知っています」

いよいよ絡み酒に発展しているヒューゴに、ほとほと疲れてきてしまったシャロン。
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