風に揺蕩う物語
暇を与えたのは僕自身だ。それは覚えている…。

シャロンが僕に憤りを感じて、自分一人で生活出来るものならしてみろと考えているのだろうか。

ヒューゴは、そんな事を考えながら机から立ち上がり、鏡を覗き見ると、自分の着ている服がまだ軍服だとようやく気づいた。そして大きなため息を吐いた。

僕は着替えもしないで酒を煽っていたのか…全く弛んでいるな。これではシャロンが僕が心配で出て行く事が出来ないと言うのも無理はない。

ヒューゴは軍服を自室のソファーに掘り投げると、普段の服装に着換え出した。

その時だ。部屋をノックする音が聞こえてきたは。

ようやく怒りも収まってくれたのかな。

「兄上…少しお話があります」

だが聞こえてきたのは、シャロンの声ではなく、リオナスの声だった。

「リオナスかい?入って良いよ…」

リオナスはヒューゴの返事を聞くと部屋に入ってくる。そして怪訝な顔をした。

「これは…」

「うん?あぁ…ちょっと飲み過ぎちゃった」

床に散乱する酒瓶。それにテーブルには手が付けられていない食事と、あまりにも普段のヒューゴの整頓された室内とはかけ離れていた。

「まぁたまには良いと思いますよ。それよりも兄上…シャロンの姿が見えないのですが、どこか使いに出したのですか?」

「うん?僕は出してはいないけど…どうしたんだろ」

ヒューゴは少し怪訝な顔をすると、自室を出て、シャロンに宛がわれている部屋に向かった。リオナスもヒューゴの後ろに続き付いてくる。

そしてシャロンの自室の前に着くと、ドアをノックしてみる。

「シャロン?居るのかい?」

「居ないですよ。先ほど確認しました」

「それを先に言ってよ」

リオナスに苦言を返したヒューゴは、少し悪いとは思いながらもシャロンの自室のドアを開けた。
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