風に揺蕩う物語
エストール王国
広大なリヴァナリスの世界には大きな大陸が三つある。

凍てつく極寒のネル大陸

灼熱の砂漠地帯リクサック大陸

緑多き動植物が多く住まうアロニア大陸

そんな大陸の中の一つアロニア大陸。

その大陸には、多くの国や村が点在しているのだが、そんな大陸の３分の１を治める大国が存在した。

それがエストール王国だ。広大なアロニア大陸の西側から南部にかけて領土を維持している王国で、治世は１２００年にも及ぶ。その歴史の長さからアロニア大陸では一番豊かな国である。

そんなエストール王国の首都は、アロニア大陸の西部に位置するフォルミス山の麓にあるファルロース。

１００万人もの国民が暮らすこの都市は、アロニア大陸に住む者が一度は夢見る街だった。涼しい気候に豊富な食糧。それに王国軍の本拠地でもあるこの街は、一番治安の良い町でもあるからだ。

そんな豊かな都市を一望出来るフォルミス山の頂上にあるのがエストール城であった。

山の標高は１０００ｍはあろうかという高山だったのだが、城が建造された時に大規模な伐採や工事が行われ、現在の標高は半分の５００ｍといった所だ。

そしてフォルミス山の頂に広大な平地を作り、その平地に白を基調にした見る者を引き付ける国王の居城が建造されている。

そんなエストール王国の都市ファルロースの立派な建物の一室で、一人の若者が微笑みを浮かべながら子供に話しかけていた。

「これで大丈夫。しばらくは腕を動かさないようにして、この薬を一日一回飲んでね。そして１週間後にまた僕の所に来てくれるかな？」

「はい。ありがとうございますヒューゴ様…」

子供は包帯で巻かれた腕を大事に抱えると、深くヒューゴと呼ばれた若者に頭を下げた。

そんな子供の姿を見たヒューゴは、少し困った表情を浮かべていると、部屋の外から忙しなくノックする音が聞こえてきた。ヒューゴはそのノックに返事を返すと、開かれたドアから日焼けをした筋肉質な腕をした男がヒューゴの姿を見るや勢いよく叩頭した。


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