six bottle
湖に到着してからしばらくたっても聖人は見つからない。



老婆はつぶやくばかり…。



鏡のような湖の風は冷たい。




月が輝いていた。




何か…。違和感…。





「セージ…。なんかこの湖へんじゃない?」





アナを撫でながら怪訝な顔で振り返る。





「どこがへんだって?」




「なんか…。この水溜まりていうか不自然に綺麗過ぎるていうか。」





水の中に入ろうとしたら腕を掴まれた。





「ダメだよ…。さっきタイムが火傷水だから…。飲むのはダメだ…。」





「別に飲むわけないじゃん!」私だってはしゃいだけどちゃんと話しは聞いていた…。泳げないからいいんだけど…。




「聖なる雫はあったかえ?あったかえ?」




「「ぎゃ~!」」





背後から老婆が寄ってきたのに気付かず叫ぶ。





がさがさ!




黒い影が…。




「ゼロ!」




タイムが悲鳴を聞いたらしく走り込んできた。




「聖なる雫はあったかえ?クック…。」





怖っ!セージとつい顔を見合わせる…。





ひそひそとこのばあちゃんヤバい?





「秘めたる秘密は鏡の中に守は雫…。クック…。」





タイムが湖を見つめた…。




湖に向かって走り出す!



「「タイム!!」」




紫の狼に股がり高々と跳ぶ…。湖の月に…。





タイムの姿が消えた。





「ああ!」





クック…。





振り返ると不敵な老婆の笑い声…。





「手助けしよう子ども達…。子ども達…。クック…。」




ヒューレに掴まり湖の月に…。




「町が!!」





そこには巨大な空間…。誰もいない町…。アクアアドマナビリス…。




巨大な空間の天井は美しい水晶、見上げれば本当の月の光が水を通して見える。
まるで月のアクアリウムのように。
< 28 / 45 >

この作品をシェア

pagetop