執事と共に謎解きを。
「恵理夜様っ」


とっさに名前を叫び、春樹は車に駆け寄った。


――ゴトン


と、なんとも鈍い音をたてて人が転がり落ちる。

息を、吸うのも吐くのも忘れ、ただ瞠目する。

身体だけが勝手に動き、転がり落ちた人間を確認する。


「これ、は……」


転がり落ちたのは、運転手の男だった。

顔には、くるくると螺旋を描いた細い紙テープが絡み付いている。

既に、その男の意識はない。


「ご無事、ですか」


車内を覗くと、春樹が飛び出す前と変わらない様子の恵理夜がそこにいた。


「遅いわ」


恵理夜が少し不機嫌そうな顔で言い放つ。


「申し訳ございません」

「これ、捨てておいて」


律儀に頭を下げる春樹に恵理夜はクラッカーの残骸を投げ渡した。

春樹は、先ほどの音と紙テープの意味を合点した。
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