執事と共に謎解きを。
――恵理夜は自室のドアノブに手をかけた。
このノブは、外から開けることはできるが、内側からは春樹と恵理夜以外の静脈は認証しない特殊なノブだった。
そして、人が通過したら必ず自動で閉まるように出来ている。
「そういえば、薬はどうやって盗まれたのかしら」
薬は、全て春樹が管理していた。部屋に入って盗んだとしても出ることは出来ない。
窓から出ることは可能にしても、外は庭園だ。
外には庭師がいる。不審者を見つけられないほうがおかしい。
「どうやって持ち出したのか……」
一瞬、夏樹の言葉を思い出す。
『ま、それで、春樹も疑われてたんだ』
春樹は、自分とセットで疑われていると思っていた。
しかし、春樹一人にも疑うに足る理由があったのだ。
春樹は戻っていない。
証拠に、すぐにお茶を入れられるようにセットされている給湯スペースの電源が全て切られていた。