執事と共に謎解きを。
「おいおい、ちょっと誤算だなー」


恵理夜は挑むような眼で、夏樹を睨んだ。


「俺に、歯向かうの?素手で?」

「……あなたに、私は撃てないもの」


ゆったりと、本来の恵理夜らしい優雅な微笑み。銃口から逃げようともしない。


「撃てるよ。それで俺が解放されて、お嬢さんが手に入るなら」




――銃声。




はらはらと黒い髪が舞う。

しかし、恵理夜は無傷だ。こんな至近距離で、はずしたのだ。


「なっ……」

「迷っているあなたの弾なんて、当たらない」


まっすぐに向けられる恵理夜の目に射竦められ、照準は全く定まらなかった。


「春樹は、誰にも渡さない」


恵理夜は、自分の胸に手を当て、自信たっぷりに告げる。


「そして私も渡さないわ」


気高く、澄んだ声。射抜くような眼。
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