好きです。
好きです

誘い

「武藤、次回の写真コンクールに出品してみないか?」

放課後、部室の鍵を取りに行ったあたしに、長谷部先生が言った。

長谷部先生は、あたしが所属する写真部の顧問だ。

「コンクールですかぁ?」

乗り気でない声を上げると、椅子に腰かけた先生が深く座りなおす。椅子がギーっと音
を立てた。

高校二年生。来年大学受験を控えていた。

先生はコンクールやイベント展示があると、先生は参加するしないにかかわらず、積極的に話しを持ちかけてきた。

写真を撮るのは好きだけど、コンクールに出展して入賞するほどの腕を持っているわけではない。

本当、趣味にちょっとだけ毛が生えた程度だった。

それでも、先生は事あるごとにあたしに声をかけてくれた。

長谷部先生は、一生懸命だった。

もちろん、あたし以外の部員…といっても、部員はあたしを含めて十人。人数は揃っていても、実際活動しているのは半分以下で、写真部というよりは写真同好会のほうが、ぴったりだった。

乗り気じゃなかったけど、長谷部先生の熱心な誘いに、あたしは折れてしまった。

「わかりました、参加します。参加しますよぉ」

いやいや参加する言い方だったけど、長谷部先生には参加するって事実がうれしかったみたいで……

「よかった! 武藤、満足する写真撮るんだぞ」

長谷部先生は笑顔で言った。

はーい。

元気のない返事をして、あたしは部室の鍵を手に職員室を出た。
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