好きです。
撮りたいもの
おかしいなぁ。
おかしいよ。
あの日、あの裏庭で心臓が音を立てた。
どきん……と、力強く、苦しいくらいに音を立てた。
放課後の部室では、二人の部員達がお互いのカメラのデータを見せ合って、写真選びをしていた。
残念ながら、写真部の部員はあたし以外は全員男子で先輩だった。
先輩達は、これがいい、こっちのほうがいい。って言いながら、互いの写真を厳選していた。
これっていう一枚が決まったみたいで、
「武藤、コンクール用の写真は決まったのか?」
眼鏡をかけた先輩が聞いてきた。
あたしはまだ決まっていなかったから、眉をよせながら、
「全然撮れないんですよー」
泣きそうな声で言った。
もう一人の先輩が、あたしの言葉に「わかるわー」と言う。
二人はもう写真を決めた。
あたしはまだ決まっていない。
二人に遅れをとっているのが悔しくて、あたしはカメラのデータを見始めた。
あれから毎日のように写真を撮っているから、その中で一枚くらいいい写真が撮れてたらいいなぁ。
期待と不安が混じった気持でデータを一枚一枚変えていくと、藤原くんの写真が現れた。
それはあの日、偶然写した藤原くん。
笑っている顔だった。
この写真を撮ってから、一か月あまり。たったそれだけしか経っていなかったけど、あたしと藤原くんの距離は、すごく近くなった。
裏庭でこの表情を見るまで、あたしは藤原くんのことをほとんど知らなかった。
ただ、顔が良くて勉強ができて、無口だけど女の子に人気があるって、ただそれしか知らなかった。
それなのに今はどう? 今は違う。
藤原くんは、笑うとこんなにいい顔をするし、それにすごく優しい。
今まで、あたしは……藤原くんのこと知らなかったのに、偶然にも、彼の違う一面も知ることができた。
おかしいよ。
あの日、あの裏庭で心臓が音を立てた。
どきん……と、力強く、苦しいくらいに音を立てた。
放課後の部室では、二人の部員達がお互いのカメラのデータを見せ合って、写真選びをしていた。
残念ながら、写真部の部員はあたし以外は全員男子で先輩だった。
先輩達は、これがいい、こっちのほうがいい。って言いながら、互いの写真を厳選していた。
これっていう一枚が決まったみたいで、
「武藤、コンクール用の写真は決まったのか?」
眼鏡をかけた先輩が聞いてきた。
あたしはまだ決まっていなかったから、眉をよせながら、
「全然撮れないんですよー」
泣きそうな声で言った。
もう一人の先輩が、あたしの言葉に「わかるわー」と言う。
二人はもう写真を決めた。
あたしはまだ決まっていない。
二人に遅れをとっているのが悔しくて、あたしはカメラのデータを見始めた。
あれから毎日のように写真を撮っているから、その中で一枚くらいいい写真が撮れてたらいいなぁ。
期待と不安が混じった気持でデータを一枚一枚変えていくと、藤原くんの写真が現れた。
それはあの日、偶然写した藤原くん。
笑っている顔だった。
この写真を撮ってから、一か月あまり。たったそれだけしか経っていなかったけど、あたしと藤原くんの距離は、すごく近くなった。
裏庭でこの表情を見るまで、あたしは藤原くんのことをほとんど知らなかった。
ただ、顔が良くて勉強ができて、無口だけど女の子に人気があるって、ただそれしか知らなかった。
それなのに今はどう? 今は違う。
藤原くんは、笑うとこんなにいい顔をするし、それにすごく優しい。
今まで、あたしは……藤原くんのこと知らなかったのに、偶然にも、彼の違う一面も知ることができた。