好きです。
藤原くんが被写体になってくれる。

それが嬉しかった。

放課後、あたしは夢中でシャッターを押した。

何度も何度も、シャッターが下りて、その度にカメラの中に藤原くんの姿が記録される。

もう、何十枚、いや何百枚も藤原くんを撮り続けた。

「かなり撮ったんじゃない?」

リィを抱きながら、藤原くんは言った。

確かに撮った。けれど、本当にこれだ! っていうのは、今の今でも撮れていなかった。

被写体は申し分ない。

けれど、カメラマンの腕が……。

「それで、俺を撮ってその写真を……まさか、コンクールに出すの?」

意外な言葉に、あたしはびっくりした。

コンクールに? そんなこと、これっぽっちも考えていなかった。思ってもみなかった。

あたしは頭を左右に振った。

「そういうつもりじゃ……」

コンクールに出すという考えはなかった。

ただ、自分が撮りたいって思ったもの、撮りたいなって思ったのが藤原くんだった。

本当にただそれだけだった。

「撮りたいなって思ったの。それだけだよ」

あたしが言うと、藤原くんは、そうなんだ、と冷めた声を出した。

あれ? あたし、何か気に障ること言ったかな?

それから少しして、またカメラを構えると、あたしは懲りずにシャッターを押し続けた。

カシャカシャと落ちるシャッター音が、裏庭に鳴り続けた。
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