好きです。
カシャッ……


音に気づいて、藤原くんがこちらを向いた。

ファインダーの藤原くんがあたしを見ていた。

あたしは気まずくなったけど、カメラをおろして藤原くんを見た。

怒らせちゃったかな?

「ごめん、思わず写真……撮っちゃった」

あたしと藤原くんの間には、結構な距離があった。

それでも、藤原くんがあまりいい顔をしていないのはわかった。

藤原くんは慌ててこちらへやってくると、

「今、俺を撮ったの?!」

あたしの真ん前に立って訊ねた。

いつもの無口な彼からは、想像できないような声。その声は感情的だった。

「撮っちゃった……」

ごめんなさいって気持ちで答えると、藤原くんの顔は真っ赤になった。

「その写真、どうするつもり?」

頬を赤くしたまま、藤原くんはまた質問した。

「どうするって……」

言葉につまった。

二歩くらいの距離に、藤原くんは立っている。とても近い距離だ。

いつもは半径二メートルの距離なのに、今日はその約三分の一。

近すぎる。

あたしも、藤原くんと同じ……まではいかないけど、頬が熱くなっていくのがわかった。


「どうして撮ったの?」

乗り出すように、藤原くんは一歩前に出た。距離が縮まり、目の前に、すぐ前に藤原くんは立った。
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