好きです。
……どーしよう。

放課後の裏庭で、ストラップを首にかけ、カメラを手にしたあたしは叫んだ。

「どーしよう!」

少し離れたところにいた藤原くんが、あたしの声に反応したリィをなだめながら、振り向いた。

「リィがびっくりしただろ? 何がどーしようなんだよ」

ぶっきらぼうな声に、あたしは小さく肩をすくめて、カメラを構えた。

「コンクールが……」

そう、あたしのどーしようは、コンクールをどーしよう。なのだ。

先生に言われるまで、あたしはコンクールのことをすっかり忘れていた。

先生に「すぐ出します」と答えたものの、出せるような写真は一枚も撮れていなかった。

何か撮らなきゃ!

そう思ってカメラを手に、裏庭に足を運んだら、案の定そこに藤原くんがいて、あたしはたまらず叫んでしまったのだ。

「まだ写真撮れてないの?」

藤原くんにはコンクールの件を話していた。

あたしはうなづくと、カメラを構えた。

小石を踏んで、じゃりじゃり音を立てながら、藤原くんがいる場所へ向かって距離を縮めていく。

その間、足元や木立、それから空を何度も何度も撮った。

シャッターが切られると、規則的にカシャッ、と音を立てた。

あたしに背中を向けたままで、藤原くんは言葉を続けた。

「写真てさ、撮ろうと思って撮れたら、誰も苦労しないよ」

藤原くんの言葉に、あたしの足が止まった。
< 7 / 16 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop