Rainy Days
『紘一君は結婚する気はないのか?』
親父は料理を食べ進めていた紘一さんに目を向けた
『俺ですか…?』
『紘一君もそういう話がないわけではないだろ?』
紘一さんは静かにナイフとフォークをテーブルにおいた
『正直、自分が結婚するなんてピンとこないんですよね。唯一したいと思ってた女性もこの世にはいませんし…』
躊躇いながらも本心を口にする紘一さんの眼には愛しい人をなくした悲しみが未だに残っていた
『結婚まで行かなくても恋人くらい作ったほうがいいと思うが?紘一君ならすぐにできるだろう?』
『そうですね…考えておきます…』
紘一さんは心にもない社交辞令を口にし、苦笑いをした
その後、会話はビジネスの話題に移り気まずかった雰囲気も段々と解消されていった