Rainy Days
『匡…人…?』
胸元を押さえ俺から身を引こうとする凪に更に近づく
「お前ってそういう女だったもんな」
口から洩れるのは乾いた笑い声だった
金持ちなら誰だって…俺じゃなくてもよかったんだろ?
俺ってバカだよな?
まんまとこいつの手に引っかかってたんだ
『どういう…意味よ…』
「お前は男に好かれるためなら何だってするんだな…」
だから
「俺になにされたって文句はないよな?」
『い…や…やめて…まさ…と…!!』
それから先はよく覚えてない
気がつくと目の前には小さく体を震わせる凪がいて
俺の手にはハサミが握られていた
ぼやけた頭で思う
ああ、俺は凪の長い髪が好きだったなあ…
他の奴らもきっと同じように思っていたはずだ
ただ今はもう面影すらない
男を誘う道具はない方がいい…
ベッドには栗色の髪が束になって広がっていた