ある17歳における不明瞭な愛についての考察




「ありと!」




俺のことをそうやって呼ぶのは、家族の他にはあいつくらいしかいない。







津田 有斗。俺の名前。


「ゆうと」じゃなくて、「ありと」って読む。





あいつも、
最初は俺のことを「ありと」とは呼ばなかった。

何度「『ありと』だよ」と訂正しても頑なに「ゆーと!」ってなもんだから、もういいかって半ば許容してしまってたんだけど。



クラスメイト達までもが俺を「ゆうと」って呼びはじめてしまった頃。




あいつ、いきなり「ありと!」って呼んだんだ。





だから俺のことを「ありと」と呼ぶのは、今、あいつだけ。





あいつ、ちゆきふみ。




ちゆき ふみ。

千往 史。







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