ある17歳における不明瞭な愛についての考察



「…はなすなよっ」



ゆるやかな下り坂にさしかかったところで千往が言う。
少しだけ上がるスピードに慣れなかったのか、俺の腰あたりをぎゅっと掴んだ手が見えた。



「お前、それ俺のセリフだし」


吹き出しながら言うと、

「そんなのわかってるし」と、千往が言い返してくる。




俺を服を掴む、小さな手。


指も細くて、白くて、俺の手とは全然違っている。



千往は、やっぱり女なんだよなあ……

自覚してはいたけど、千往は周りが思うほどに強くない。



誰かに「離せ」って言われても、俺だけは、千往をはなさないでいる。



だから、千往も。





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