ある17歳における不明瞭な愛についての考察
千往はくすんと鼻をすすっただけで、なんにもしゃべらない。
俺もわざわざ何かしゃべろうとはしない。
いつの間にかあれだけいた自転車の群れが、視界の中から消え去っている。
歩く千往のスピードに合わせる俺と、出来るだけ速く歩こうとする千往。
千往が履いたローファーの硬い靴底とアスファルトがぶつかって、ぱちぱちと音がする。楽器みたいだ。
まるで違う世界に飛んでいったみたいだ、俺は思う。
自転車の群れが?
それとも、俺達が?
「ねえ、有斗」
千往の声で我に返る。