ある17歳における不明瞭な愛についての考察
「ありとだって論文あるじゃん」
クッションに顔を埋めた千往が俺をじいっと見つめて言った。
この困ったような表情は昔から全く変わらない。
「残念、俺は二足歩行ロボットの設計図を三日前に提出してきました」
俺の言葉にうなだれる千往を、頬杖をつきながら見つめた。
ゆらゆら、揺れる千往の結った前髪。
もう観念したのか、千往はかばんからクリアファイルを取り出して広げ始めた。
どうせすぐに眠くなるんだろう。
千往のためにコーヒーを入れよう、と狭いキッチンへ向かう。
「論文なんか、それっぽい題名でそれっぽいこと書いとけばいいのっ」
千往の自分に言い聞かせるような言い種が、小さなこどもみたいで可笑しくて───ぶっちゃけ、ものすごく可愛い。
「つーか、それっぽい題名ってなんだよ?」
この間の安売りで買ったお徳用詰め替えパックを探しながら、戸棚の奥にこもった俺の声が千往に飛んでいく。
「そりゃもう、アレだよー」
すごくそれっぽいやつ!と、音を立てる駅前スーパーのビニール袋に埋もれて聞こえる千往の声。
「…──『なんとかにおける、なんとかについての考察』!」
うん、確かにそれっぽい。
*****2.┌─ fin