奏〜大好きなキミへ〜
『はーい、これから入学式の説明をします』


『…は…で…。』

――先生の話なんて頭に入ってこない。

期待に胸が膨らむ。

これからあたしは

どんな人と出会うんだろう?

…恋とかできるのかな?


『じゃあ廊下に名簿順に並んで』
もう入学式か…

前後左右誰も知っている人がいな
くて気まずかった。

そんなとき、

『緊張しますか?』

担任が話し掛けてきてくれた。



そぅ言えば全然緊張してないな…

「いえ、全然大丈夫です!」


笑って答えた。


『あっそうですか〜』

なんか軽いなぁ…


入学式は思っていたようなもので
はなくて、


新1年生が集まり、

名前を呼ばれるだけの

簡単なものだった。



あっという間の入学式が終わって
LHRとやらが始まった。


そこでいきなり担任に呼ばれた。

『黒板にこれ書いて』


渡されたのは委員会の表。


教室中がシーンとしている中

黒板に書く音だけが響く。



「字が男子みたい」

そうささやきあう声が聞こえた。

汚くてすみませんねと

心の中で呟く。


そのとき、先生が自己紹介を始めた。

生徒にも自己紹介が回ってきた。

あたしの番は最後。


どうしよう…

第一印象大切だよね…

笑いとらなきゃ…


地味なあたしにはできるはずもなく。

あえなく失敗に終わった。


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