駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
咳が止まらない沖田を担ぐ原田に、矢央は背後を振り返り自分たちを心配そうに見守っていたおまさを気にした。
「でも、彼女はっ?」
「あ? ああ…おまさ悪いが、こいつらを屯所に連れて帰らねぇとなんねぇ」
気にする矢央をよそに原田は真剣な表情でおまさに言うと、おまさは少し切なげに俯きながらも頷いた。
そんなおまさの頭を撫で 「またな」 と短く告げその場を去った原田。
矢央は、せっかくの逢い引きを邪魔してしまった負い目を感じ、おまさに駆け寄ると 「ごめんなさい」 と頭を下げる。
「気にせんといて下さい。 原田はんが仲間想いなんは、よお知ってますから」
何だか羨ましいとさえ思う。
お互いを信頼しているからこそ、数少ない言葉でも通じあえているようにみえる二人を。
そんな二人を面白半分で探りを入れようとした自分が恥ずかしくなる。
「あの…」
「はい?」
「原田さんを、よろしくお願いします」
「……はい」
おまさに見送られながら、矢央も原田たちの後を追いかける。
とんだ騒ぎにはなったが、ちょっとだけ心暖まる出来事に不謹慎にも頬がにやける矢央であった。