駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
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沖田が山南を追ってから、永倉は一人広間を抜けると、沖田よりも先に広間を出た少女を捜す。
彼女のことだから部屋には戻っていないだろうと、迷わず外へと足を向けた。
「いた」
一番可能性が高いとすれば壬生寺だろうと向かった先に、膝を抱えて踞る彼女を見つけた永倉は、頭をかきながら歩み寄る。
「土方さんに怒られて、腹立って飛び出した割には言い付けは守る。 お前って、律儀だよな―…」
「………」
土方と矢央は、新撰組の中でもよく衝突する。
一方的に矢央が怒っていることの方が多いが、喧嘩すると決まって屯所を抜け出す矢央に土方は 「逃げ込むなら壬生寺にしろ」 と注文付けた。
可笑しな話だ。 土方にキレているのに、土方の言い付けを守って矢央が行く場所は決まって壬生寺だけなのだから。
「他に…知らないから…」
「あれが、あの人なりの優しさだって分かってんだろ」
矢央の隣に座った永倉は、上着を着ずに出て行った矢央の肩に、矢央がいつも使う綿入り羽織りをかけた。
金魚柄のお気に入りなやつだ。
「…分かってますよ。 でも、私だって…山…み…ッッ」
止まりかけていた涙が、思い出して又溢れだし、矢央は顔を押さえ込む。
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