駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
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沖田は言い付け通り、山南を生きたまま屯所まで連れ帰った。
山南が戻って来たことを知った面々は、騒ぎにならないように時間を置いて前川邸の門を潜る。
藤堂は山南を見た途端、彼に抱きつき泣き崩れた。
何度も 「どうして」 と、嗚咽混じりに。
永倉や原田は涙こそ流しはしなかったが、山南を見る表情は悲しみに歪んでいた。
そして近藤は、山南に何故出て行ったのかを問いただすも、山南は断固として口を開くことはなかった。
「俺のせいか?」
土方の問いに、ようやく顔を上げる山南。
強張った表情に対し、山南は無表情で土方を見つめた。
もう一度、土方は同じ言葉を口にする。
「俺の…せ―」
「いいえ。君はいつだって正しいですよ」
「…ッッ!」
久しぶりに見た山南の微笑みは、今の土方にはかなり酷なものだった。
山南から剣を奪い、地位を奪い、居場所すら奪ったというのに。
「近藤さん、こうすることしか出来ない私を許して下さい」
「…山南(さんなん)」
近藤は瞼を閉じ、ただ悔しそうに唇を固く結んでいた。
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