駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
第十話*山南、雪に散る。
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翌日の朝、朝餉の支度を手伝っている矢央の下に、目の下に隈をつくった藤堂が現れた。
女中は藤堂の姿を見ると小さく解釈し、矢央に藤堂がいることを伝えた。
「…ごめんな。 忙しいのに」
朝餉の支度は女中に任せ、矢央は藤堂と共に庭へ。
立ち止まった藤堂は、首の後ろを擦りながら振り返った。
「平助さん、寝てないでしょ?」
「ん〜、寝付けなくて。 矢央ちゃんだって、目…充血してる」
互いに眠れるわけがなかった。
山南のことが気になり、布団に入るも頭は嫌に冴えたまま朝を迎えた。
昨晩は屯所に残った原田も、きっと眠ってはいなかっただろう。
「もしかしてさ、泣いた?」
土方との一悶着の後、藤堂は矢央のことが気にはなったが捜しに行く余裕がなかった。
気付けば部屋に戻って来た矢央と一言も交わすことなく布団に入ったものだから、矢央が泣いたことも知らなかった。
目の下を親指でソッと撫でると、シュンと俯いた矢央を見て情けなくて溜め息が出る。
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