駆け抜けた少女ー二幕ー【完】


―――
――――……


『山南さんよぉ、俺は近藤さんに俺の人生をかけることにしたぜ』


稽古をサボってやって来た河原で、土方は山南に唐突に言ってみせる。



『…ンでよぉ、俺には正義っつーもんがねぇ。学だってねぇんだ。 けど京に行ったら、俺は近藤さんを本物の武士にしてやりてぇのさ、だからあんたには見張っていてほしい』



遥か遠くを見つめ、土方は山南にだけ密かに叶えたい夢を語った。

それを嬉しそうに耳を傾けながら、山南は笑顔を絶やさない。

『俺が、間違った方に行かねぇように、あんたが見張ってくれ。 隣で、ずったな――』


『そうだね。 君は、放っておくと何をしでかすか分かったものじゃないからね』


『ハハハッ! ちげぇねぇ』



―――――
――……




白刃を自らの腹にあてがう山南。

土方は潔いその姿を見ながら、懐かしい過去を思い出した。

過去を振り返るなと言っておきながら、振り返らさせたのは刀を受け取り際に見せた山南の笑顔のせいだろう。


何かを諦めたような、けれどとても安心したような安らいだ笑顔のせいだ。



「沖田君、頼んだよ」


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