駆け抜けた少女ー二幕ー【完】

｢ッッッッ―――｣


二人は抱き合いながら、声を殺して泣き続けた。

夜が明けるまで、その頬を濡らす涙が乾くことはなかった。







―――
――――……


『……土方さんが山南さんを嫌っていない、とっておきの証拠もあったりしてね』

『とっておきの証拠？』



数日前の記憶が、ふと甦った。


土方が書いたという、お世辞にも上手いと言えない発句集の中から沖田は一句矢央に見せた。

その句を読み、土方の山南に対する想いを、ほんの少しだが分かったような気がした。


不器用な彼なりの、不器用な彼への想い。





"水の北 山の南や 春の月"



――――
―――――……



もうすぐ屯所の庭に、去年と変わることのない桜が咲く。

桜が咲いたら、皆で花見をしよう。

花が大好きだった山南へ、変わらぬ春の訪れを教えるために―――


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