駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
不穏な空気を読み取った永倉が話題を反らしたため、沖田と藤堂も睨みあうのを止める。
「つぅか矢央、お前それまだ持ってたのか?」
それとは、矢央の掌に乗った赤い石である。
これは今は亡きお華と矢央を繋いでいた石であり、永倉達はお華が天に召されたためにもう無いものだと思っていた。
「それが、お華さんが成仏してから確かに消えたんだけど、さっき見つけたんです」
池田屋事件の後、暫くして落ち着きを取り戻した矢央は、そういえばと思い立って石を探した。
が、何処を探しても石は無かったのに、何故か今頃になって矢央の前にまたキラリと輝きを見せたのである。
「なんででしょうね?」
「さあ? でも、これお華さんにとっては大切な物みたいだし、いつか返しに行きたいなぁって」
お華にとっては、亡き祖父の形見とも言える大切な石だ。
矢央はいつか江戸に行けたら、お華の墓に持って行こうと考えた。
それまでは、自分が大切に預かっていようと。
「だからほら、ずっと前に平助さんがくれた巾着に入れて持ってようと」
私物を入れておいた箱を漁り、一つの巾着を取り出した矢央は、赤い石をその中に入れた。
藤堂は、まだ持っていてくれたことに嬉しくなり、久しぶり穏やかな笑みを浮かべる。
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