駆け抜けた少女ー二幕ー【完】

矢央と沖田は気付いていなかったが、永倉と原田はその笑みに少しホッとした。

山南を失い心に穴が空いた状態が続いていたのは、沖田達だけではない。

永倉や原田もそうだが、中でも藤堂は山南を兄のように慕っていたこともあり、その落ち込みようは半端なかった。


任務こそサボりはしないものの、心此処にあらずで、常にボーッとした日々が続いていた藤堂は、ある日を境に元の藤堂に戻っていた。

元気で騒がしく少し口の悪い、いつもの藤堂平助。 ――に、矢央は感じただろう。


しかし、試衛館時代から共に暮らした者なら分かる違和感があった。



「ねぇ平助さん、これ平助さんの荷物でしょ」

「あ、うん。 そうだけど?」

「こんなにいっぱい本あるけど、全部読んだの?」


十冊ずつ纏められた本が、横に四列奥に三列に並べられた本を見て、矢央は憧れの眼差しを向けていた。

勉強が嫌いな矢央は、活字が苦手中の苦手であり、それをこんなにも読んだ藤堂は尊敬に値するのだ。


チラッと本を見やり一つ頷いた藤堂に、矢央は 「凄い」 と感心の息を漏らす。


「……それくらい、誰にでも出来るよ。 字が読める奴ならさ」

「……平助」


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