駆け抜けた少女ー二幕ー【完】

矢央だけが分からない違和感。

それは、藤堂が元に戻りすぎているということだった。


明るく口が達者な美少年。 それが初めて会った時の、藤堂平助の印象だった。

一月程共に暮らすようになって皆が気付いたのは、藤堂は社交的だが、人と距離を取りたがるとこがあると。


近付けば離れようとし、しかしそれは悪気があるわけではなく、何かに恐れているかのように見えた。



「あ、てか、そろそろ台所も片付くんじゃない? 僕お腹空いちゃったから、なんかないか聞いてくるよ」

「え、平助さん!?」


突然部屋から出て行ってしまった藤堂に、矢央は唖然とする。

その様子を見て、永倉と原田は 「んじゃ俺達も」 と、後を追って行ってしまった。


残ったのは矢央と沖田だけで、首を傾げながら振り返った矢央は、

「私なんかしたっけなぁ?」

と、考えてみるが、何も思い当たることはない。


そんな矢央を見つめていた沖田は、途中になっていた片付けを手伝いながら、痛む胸に眉を寄せた。



(私を…彼は恨むでしょうか)


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