駆け抜けた少女ー二幕ー【完】

伸びた影を見つめ、皮肉を込めて言った。

今まで見たことがない藤堂の態度に、矢央は戸惑い言葉を失う。


「…山南さんと初めて話しをした時、君はひねくれているって言われたんだよね」


懐かしむように語りだした藤堂の脳裏には、試衛館時代の情景が浮かんでいた。

まだ若い山南と、少年だった藤堂。


「初めて交わした会話がそれって失礼だろ。 だから、僕…最初は山南さんを良く思ってなかった」

自然と避け、気の合う永倉や原田と共にいたが、気が休まらない藤堂は一人になることも多く、一人になった時に限って山南は藤堂の前に現れた。


「何かを話す訳でもなくて、ただ流れる時間を一緒にいた。 だけどある日、また山南さんは言ったんだ……」



――皆を信じても良いんじゃないかな。





「何を言ってるんだって睨む僕に、山南さんは笑って続けた。 肩の力を抜かないと、君が疲れるだろう…って」


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