駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
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「藤堂君は、なんだろうね。 周りに気を使いすぎているように思ってね。 近藤さんはあんな人だし、此処にいる者達も気を使わなければならない人は、一人もいないんだよ」
「…そんなつもりないですけど」
気を使う? そのように感じたことはなかった。
だがそれは藤堂だけで、周りはそうではなかった。
「君は頭も良い、腕も立つ。 なのにそれを鼻にかけることもなく、とても良い人だと思うが。 年相応の素直さがないだろう? ひねくれているって言うか…」
「…失礼だね、あなたは」
「はは、気を悪くしないでくれ。 ひねくれているって言うか…そうだねぇ。 わざとらしいよ、藤堂君の態度は」
何を言われているのか分からず、苛々が募る。
藤堂が舌打ちをすると、山南は機嫌を悪くすることもなくにこやかに続けた。
「皆の会話に合わせて、生活に合わせているけど、それは君の本心ではないんじゃないかい?」
「何が言いたいんですか?」
「恐れている。 人からはみ出すのを、君は恐れているだろ?」
山南の笑みが消え、真っ直ぐな瞳に射ぬかれる。
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