駆け抜けた少女ー二幕ー【完】

本人でも気付かなかった心の奥底を、たった一月共に過ごしただけの山南に見抜かれたことに驚きを隠せない。



「君の態度には最初から違和感があってね。 試衛館が好きなんだろうとは思うのに、人には必要以上に近付かないようにしている。 可笑しいだろう?
自ら此処に止まりたいと頭を下げた君なのに、どうして私達を避けるのかな?」


「…嫌なんですよ。 人の中に踏み込むのが」


寒いわけでもないのに身体が震え、藤堂は両手で肩を抱き締めた。


「必要とされたい自分がいる。 此処でなら、僕の居場所が見つかるかもしれない。 だけど…怖い。 必要と、されなくなる日が来るんじゃないかと思うと、踏み込めない」


語る藤堂の様子から、山南は彼の生い立ちに関係があるのだろうかと思ったが、敢えて聞くような真似はしなかった。

本人が話したければ、時間をかけてでも話す。

逆に隠したい過去ならば、いくら親しくなろうとも彼は隠し通すだろう。



「難しく考えることはない。 単純なことさ」


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