駆け抜けた少女ー二幕ー【完】

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「君が必要とするならば、私は君を必要とする」


黙っていたかと思えば、突然発せられた言葉に矢央は小首を傾げた。


「山南さんに言われた言葉なんだ。 それがさ、言われた後、不思議と身体の力が抜けた。
僕は居場所が欲しかった。 必要とされたかった。 崩されない絆があるのか知りたかった。
だけど、それを確かめる勇気がない僕を、山南さんの一言で気付かされたんだよね」



グッと、唇を噛み締めた藤堂。
あまり自身を語ることのない藤堂だったが、箇所箇所を省きながらも言葉を繋いでいった。



「僕が求めれば、返してくれる人がいたんだってことに。 それが、仲間なんだってことに」

「平助さん…」

「今でも迷う、けど、あの人がいたから僕は仲間を信じてこれた。 僕には、国のことよりも何よりも、目の前の仲間が大切だったから、仲間がいるから頑張れる。 強くあれる」



パサリと落ちた睫毛の隙間から、僅かな滴がポタリと流れた。

男が流す涙を見たのは、沖田に続き二人目だった。





「なのに…その仲間を信じていいのか分からないんだよ」



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