駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
第二話*松本、屯所を訪ねる。
***
新撰組が西本願寺に移り住むようになって二週間程経ったある日、屯所にとある人物が訪ねて来た。
「近藤さんは居られるかな?」
「局長に何用か?」
優しい顔立ちに似合わぬ大きな体躯は、門を守っている三人の新撰組隊士よりも大きい。
本日、局長近藤を訪ねて来る者がいると聞かされていない隊士は、威嚇の意思を示した。
だが大男は何食わぬ顔で 「ちとした知り合いなのだがのぉ」 と、隊士達の間から中を覗く。
「貴様っ!!」
「うーむ、困ったのぉ」
全く困ったようには聞こえないのだが、此処で揉めていても仕方ない。
どうしたものかと大男が荷物を背負い直した時だった。
「あれ? どうかしましたか?」
「沖田隊長!! いえ、この者が局長は居るのかと…」
「うん? あなたは……」
丁度通りかかったのは、新撰組一番隊隊長・沖田総司。
本日の門番を引き受ける隊士達の隊長でもある彼は、大きな瞳に少し緊張感を漂わせ大男を見定めた。
暫く見つめあった二人。
先に笑みを浮かべたのは沖田で、身体を斜めにずらすと白い腕を中へと向けた。
「お待ちしておりました。 松本先生」
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