駆け抜けた少女ー二幕ー【完】

「ところで近藤さん、立派な屯所を少々見学させて頂いてもよろしいかな?」


他愛ない会話を暫く交わしていたが、松本のこの発言により屯所を案内して回ることになった。

近藤と土方だけで良いと思ったが、松本に気に入られたらしい沖田と矢央も同行することになり、五人は広くなった屯所内を歩いて回る。



「沖田さん、私も一緒にいていいんですかね?」

「私達と一緒ですから大丈夫ですよ」


女子である矢央の行動範囲は相変わらず狭い。

矢央を女子であると知る知らない輩であろうと、大人数で住まう屯所内は色々と危険なのだ。


「うむ」

道場や広間、隊士部屋、その他の部屋を見て回るに連れて松本の表情は険しくなっていった。

「…まったくこれは」

「ん? きゃあああっ!」


隊士部屋の一つを覗いた松本は眉を寄せ頭を振るい、何だろう(?)と部屋を覗いた矢央は、顔を真っ赤にして土方の背後へと隠れてしまう。


「女みてぇな声を出すな、馬鹿」

「だ、だってだって! あんなもの見せられたらぁぁっ!」


呆れる土方の着物を掴み、背にぐりぐりと顔を押し付ける矢央が見てしまったものとは、


「男所帯だから仕方ないとは言えませんな」


女の目がない隊士達は、気温が上がってきたためか身体の熱を冷まそうと、裸同然で寝ている者ばかりだった。

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