駆け抜けた少女ー二幕ー【完】

目の前に広がる見たくない光景に矢央は顔を覆い、土方は連れて来るんじゃなかったと肩を落とす。



裸同然のふしだらな隊士達はどうかと思うが、そのおかげで松本は新撰組の実情を知ることが出来た。


「近藤さん、隊士の数は?」

「え? ええっと確か百五人程かと…」

「約三割ですな。 三割の隊士が、負傷または病人とお見受けした。 近藤さん、これはちと放ってはおけませんな」


部屋へと戻る松本の隣で、近藤は不甲斐なさに俯いていた。


「情けないお話です。 このようなことになるまで気付きませんでした……」

「悔いているだけでは仕方ない。 これからは、私も協力しますから新撰組も頑張って頂きたい」

「松本先生っ!!」


松本へ助けを求めた近藤、それに松本は全力で応えようとした。



「まずはこの環境を直さねばなりませぬな。 屯所を回ってみると、台所は残飯や腐りかけの魚や野菜をそのまま放置。 これは、豚と鶏を飼い餌にしていただこう」

「豚や鶏ですか?」

「滋養ある食べ物を与える必要があります。 ですから、残飯は餌にすれば、無駄もなくなる」

「成る程!」

「そして、浴槽を構えて頂きたい。 怪我人は毎日風呂に入り清潔を保たねば、治るものも治りませんぞ。 私も、これからはちょくちょく屯所に顔を出し、診察します。 薬も手配しましょう」

「ううっ。 松本先生、何から何までありがとうございますっ」


部屋へ戻って来た松本は、休むことなく指示を下した。


近藤は、その頼りがいある松本に感謝せずにはいられない、


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