駆け抜けた少女ー二幕ー【完】

***


矢央と沖田の呼び掛けにより、広間にて松本の健康診断が始まる。

松本が呼び寄せた医者や助手数名で、百人を越える人数を診察するため、広間には人集りが出来てしまった。



「おいおい、こりゃ何の騒ぎだ?」

巡察から帰って来た永倉が目を丸くして、隊服を着たまま広間に引寄せられて来た。


「あ、永倉さん巡察ご苦労様です! これはですね、健康診断です。 永倉さんも、ちゃんと受けて下さいよ?」

「健康診断?」

「おお! 新八! お前、最近風邪気味だとか言ってたろ。 丁度良い診てもらえ!」


診察風景が一つのイベントのようで、興味津々な矢央は永倉にも列に並ぶように指示を出す。

すると、先に並んでいた原田が永倉を手招きした。



「永倉さん、風邪気味なんですか?」

「いや〜…ちょっとダルいだけだ。 ンなことより、お前は受けたのか?」


永倉は脱いだ隊服を矢央に渡し、心配顔で見上げてくる矢央の頭を撫でる。


「ううん、まだです。 松本先生が、私は最後に診てくれるみたいで」


診察が始まる前に、松本は矢央を気遣い診察は後にしようと提案してくれた。

だから今は暇を持て余している状態だと言いながら、永倉と共に最後尾に並んだ。


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