駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
「永倉隊長! お先にどうぞ!」
「うん?」
矢央と話していた永倉は、前に並んでいた平隊士に先を譲られ方眉を上げると。
「否、お前のが先に並んでたんだ。 隊長だからって、譲る必要はねぇぜ」
「し、しかし…」
この男の顔には見覚えがない。
最近入隊した隊士なのだろうと永倉は思いながら、気をきかせてくれたのであろう隊士にお礼を言う。
「ありがとよ。 でも、気遣いご無用」
にっと、口角を吊り上げ笑う永倉に、隊士は照れ笑いを見せた。
そして一礼すると前を向き、順番をひたすら待つのだった。
「そういや、平助がいねぇな? あいつは終わったのか?」
「平助さんは、まだ巡察から帰ってないですよ」
「ああ、そうか」
「はい」
「……」
「……」
会話が続かなくなり、永倉は頬をかきながら天井に目をやり、矢央は足で床に幾つかの丸を描いた。
気まずい雰囲気というわけではなく、良く考えればここ最近永倉と二人で話すことがなかったので、話題が思い付かない。
ああでもない、こうでもないと話題を考える二人。
「……なあ」
「あ、はい!?」
先に口を開いたのは永倉で、ビクッと肩を揺らし振り向く矢央。
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