駆け抜けた少女ー二幕ー【完】

神妙な顔持ちの永倉に、何を言われるのかと不安になる。

なかなか続きを話さない永倉だったが、視線を感じる方へと顔を向けた。



「平助のこと、お前はどう思う?」

「平助さん?」


何故か藤堂の話題になり、矢央は首を傾げた。


どう思う、それは色んな意味で捉えることができ返事に困る。

列の流れに乗りながら、ゆっくりと進む。


「深く考えなくていいんだ。 あいつ最近元気がねぇからよ」



"仲間を信じていいのか分からない"


永倉の言葉と、藤堂の言葉が重なった。


「あいつにとって、あの人を失ったのは相当堪えたはずだ。 なんだかよぉ、芹沢さんの時のお前と、今の平助が重なって見えるっつぅか」


人でガヤガヤしているとはいえ、公には出来ない内容に永倉は声を潜めた。

その隣で、矢央は黙って思い更けた。


言われて気付いたが、確かに似ているかもしれない。

芹沢を亡くし、仲間を信用しきれなくなった過去の自分。

もしもあの時の矢央と、今の藤堂が同じ行動に出るとしたらと考えて眉を寄せた。


「あっちゃならねぇんだ。 俺は、これ以上仲間を失いたくねぇ。 けどよ、平助を止める権利は俺にはねぇんだよ」

「永倉さん……」


.
< 143 / 640 >

この作品をシェア

pagetop