駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
神妙な顔持ちの永倉に、何を言われるのかと不安になる。
なかなか続きを話さない永倉だったが、視線を感じる方へと顔を向けた。
「平助のこと、お前はどう思う?」
「平助さん?」
何故か藤堂の話題になり、矢央は首を傾げた。
どう思う、それは色んな意味で捉えることができ返事に困る。
列の流れに乗りながら、ゆっくりと進む。
「深く考えなくていいんだ。 あいつ最近元気がねぇからよ」
"仲間を信じていいのか分からない"
永倉の言葉と、藤堂の言葉が重なった。
「あいつにとって、あの人を失ったのは相当堪えたはずだ。 なんだかよぉ、芹沢さんの時のお前と、今の平助が重なって見えるっつぅか」
人でガヤガヤしているとはいえ、公には出来ない内容に永倉は声を潜めた。
その隣で、矢央は黙って思い更けた。
言われて気付いたが、確かに似ているかもしれない。
芹沢を亡くし、仲間を信用しきれなくなった過去の自分。
もしもあの時の矢央と、今の藤堂が同じ行動に出るとしたらと考えて眉を寄せた。
「あっちゃならねぇんだ。 俺は、これ以上仲間を失いたくねぇ。 けどよ、平助を止める権利は俺にはねぇんだよ」
「永倉さん……」
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