駆け抜けた少女ー二幕ー【完】

誰もが藤堂の変化に気付きながら、敢えて何もしようとしない。

見放しているのではなく、見守ることしか出来ないからだ。


「あいつは、良くも悪くも純粋だからな。 変な気を起こさねぇか心配なんだよ」


原田と斎藤の順番が回って来たようで、前方では原田が騒いでいる。

どうやら腹の傷を語り出したようで、それを後が支えてるんだと斎藤が急がせているようだ。


「永倉さんは…」

「うん?」


二人の様子を微笑ましそうに眺めていた永倉は、俯いていた矢央へと顔を向け、ゆっくりと顔を持ち上げた矢央の双眸と視線がぶつかった。


「永倉さんは、大丈夫ですか?」

「俺?」

「あの事は、どんな形であれ皆が辛いと思ったはずだから。 永倉さんも…」


沖田や藤堂は、今でも時々ボーッとして過ごす時がある。

近藤も、あの日から暫くは毎晩酒を飲まないと眠れないと言っていた。

そして、あの土方は、今でこそ何事もなかったように過ごしているが、当日は部屋にこもり、翌朝の顔は最悪だった。


原田に関しては、屯所での寝泊まりを極力避ける始末。

しかし、山南と近い存在でありながら、逃げ込む場所もなく落ち込む様子すら見せなかったのは永倉だけのように思えた。


だからこそ気になるのだ。


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