駆け抜けた少女ー二幕ー【完】

頼られてばかりでは、きっといつか疲れてしまう。

だから、矢央もまた皆を励ましたい。 それは永倉もなのだと、真っ直ぐ彼を見つめた。


永倉は意外そうに目を見開いていたが、暫くして目を細めると、また矢央の髪をぐしゃぐしゃと掻き回した。


「うをっ!!」

「…ったく。 いつの間にか、良い女になりやがって」

「へ? なんですか?」


上手く聞こえなかったと訴えたが、永倉は笑って誤魔化した。
そして、少し伸びた矢央の髪を人束掬いあげ思い出す。




(ガキだと思って、早く強くなることを望んだが。
こうも成長されると、意外と寂しいもんだな……)



矢央がこの時代にやって来て、三度目の春。

妹のような彼女を見守って来た永倉には、矢央の成長が嬉しいようで寂しく感じた。



「おう、矢央。 お前、寝起きみてぇな頭だな?」

「まるで鳥の巣だな」


診察を終えた原田と斎藤が、永倉によってボサボサになった頭を見て笑う。


「鳥の巣って言うなっ!!」

「手で直るか?」


怒る矢央の髪を撫でて直してやろうと原田は手を伸ばした――――が、


「隙ありッッ!!」

「うがががっ!!」

直すふりして、また髪を掻き回した原田を、目をつり上がらせ追いかけていく矢央。


「永倉さん」

「クックックッ! …ん?」

「間島は、もう案ずることはないようだな」


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