駆け抜けた少女ー二幕ー【完】

「肺を侵し、死に至らしめる不治の病」


松本は、その病名を言いたくないのか言葉を止める。

代わりに、山崎が口を開いた。


「結核」

「…間島君の前に診察した若者は、その結核に侵されている」

「!?」


ガシャンと、山崎は持っていた記録帳を床に落とした。

それを拾い、山崎に渡そうと見上げた矢央は、山崎の大量に流す汗に驚く。


「山崎さん?」


結核と聞いた時までは、そんなに変化は見られなかったのに、次の松本の言葉から様子が明らかに違う。


一体、その若者とは誰なのか?



「ま、松本先生、間違いないのですか…」


山崎の声は、僅かに震えている。

松本は、ただ頷いた。


話が掴めない矢央に、松本は 「落ち着いて聞いてくれ」 と前置きすると、矢央の細い肩に手を乗せた。


そして、その若者の名前を静かに発した。
















「沖田君、彼はそう長くは生きられない」



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