駆け抜けた少女ー二幕ー【完】

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「おっきたさ〜ん!」

「あ! 矢央さん、診察は終わりましたか?」

「はい! ばっちり健康体です!」


最近開花した桜を眺めていた沖田は、声をかけられ振り返る。

花弁が風によって、沖田の髪にちょこんと乗ったのを見て、矢央は嬉しそうに見て笑みを浮かべていた。



"沖田総司、結核により死"

いつかの授業で聞いた、新撰組随一の剣の使い手と言われた沖田総司は結核にて死去。


ただ何となく聞いていた授業内容は、矢央の感情を一切動かすことはなかったのに、今になって酷く感情が揺れた。


残酷すぎる告知に、初めて救護隊になったことに僅かな後悔を覚えた。


知りたくなかった。

沖田の病名など知らず、このままいつも通り彼と過ごしたかった。



「松本先生のお墨付きですよ! 馬鹿は風邪すらひかないんです!」


長くはないって、この優しい彼は後どのくらい生きられるのだろうか。


『君達には、病気が周りに感染せぬように気遣いつつ、彼の力になってもらいたい』



沖田の力に?


一体どうやって?



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