駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
逞しいとはお世辞にも言えない沖田の細い腕だったが、矢央にはとても頼りになる腕である。
ギュッと、抱き締め返してくる矢央の頭に顎をチョコンと乗せ、小さく息を吐いた。
「沖田さんが、元気でいられるように私いっぱいいっぱい頑張りますっ。 だから…」
「うん」
「だからっ、何をしても意地でも生きて下さいっ!」
涙を溜め赤くなった顔を見つめて、沖田はゆっくりと瞼を閉じた。
「うん。 わかった…」
その約束は果たされないかもしれないけれど、この約束が少しでも沖田の生きる力になるように願った。
沖田の胸に耳を当てると、トクントクンと音を奏でている。
力強く、生きていることを主張している。
沖田のこの音が、少しでも長く聞けるように出来る限り力を尽くそうと誓った。
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