駆け抜けた少女ー二幕ー【完】

「武田さんか、関わらんことを薦める」


宴会の場に戻って来た矢央は、巡察に行ったからであろう姿が見えなくなった武田がいた場所を見る。


「なになに? なんの話だ?」


そこへ腹に落書きしていた原田が現れ、原田こそ何をしているのだと聞き返すと、腹芸を披露するところだと胸を張られる。


「武田さんねぇ、あの人は頭は良いけど気に食わねぇよな。 近藤さんに尻尾振って媚を売るとことか特に」

「なよなよしてて、気持ち悪いし」


永倉や藤堂の評価も悪いらしく、矢央は少し危機感を覚えた。


「気をつけろって、言われたんですよねぇ」

「「「「………」」」」


どうしたのか、四人は矢央を見て固まった。

暫くして何か納得したのか、うーんと唸り始める。


「確かに気をつけた方がいいかもな?」

「うっ!?」


突然背後から伸びてきた手に顎を掴まれ、勢いよく上を向かされた。

内容を密かに聞いていた土方の顔が視界に入ると 「痛い!」 と、手を払いのける。


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