駆け抜けた少女ー二幕ー【完】

宴会の場の一角、異様な光景が出来上がっていた。

矢央を取り囲み、幹部数名がこそこそと意見を交換しあっている。


「でもよぉ、武田さんの好みはもうちぃっと大人な…」

「否、少年から青年、とにかく綺麗な子か可愛い子って感じだったような」

「となると、矢央は範囲内っつぅわけか」


原田、藤堂、永倉の危険な発言を聞きながら土方は頭を悩まし、斎藤はある人物を呼び寄せた。


その人物は、もうすっかり立派な青年となってはいるが、見た目は女性と見間違っても可笑しくないくらい綺麗な顔立ち。


「私に何用で?」

「沖田さん貴方は一度、武田さんに目をつけられていなかったか?」


呼ばれた沖田は、土方と斎藤の間にヒョイッと割り込りニコッと笑う。


斎藤の発言に驚き、ええ!っと声をあげる数名に笑顔のまま沖田は頷いた。


「そういえばそんなこともありましたねぇ」

「だ、大丈夫だったのか?」


大丈夫かと尋ねている割には、好奇心に溢れた瞳が輝いている原田。


「しつこいので仕方なく、お相手して差し上げましたよ」

「やられちまったのかっ!?」

「こちらの方でですよ」


腰の刀に手を添えた沖田。

顔は笑っているが、雰囲気がやけに冷たかった。


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