駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
「なんだ脅かすなよ。 俺はてっきり総司の貞操が…」
――カチャリ…
「原田さん、それ以上言うと貴方のその横一文字を十文字にしてさしあげますよ」
「………」
「左之、素直に謝っとけ。 お前じゃあ勝てねぇ」
沖田と原田の一悶着があった間、矢央は教育上宜しくないと判断した藤堂が耳を塞いでいた。
沖田は刀をもとの位置に納めると、顎に指を添えて 「でも…」 と言葉を濁す。
先を促されると、一度ぐるりと皆に視線を送った。
「以前の矢央さんなら危険はないと思っていたんですが、今はちょっと危険かもしれないですね」
沖田が言うには、二年の間に成長した矢央が丁度武田の範囲内に入るという。
背の低くさは変わりはしないが、これまで現代では体験出来ない過酷な状況に置かれた矢央は、それなりに成長し、加えて髪をバッサリ切った事により雰囲気も変わっている。
「正体を知っている私達ならそう感じないでしょうが。 近頃の矢央さんは、美少年だと町でも噂が立つ程ですからね」
「び、美少年? 私が? ほへぇ」
「おいこら、喜ぶとこじゃねぇだろ」
美少年と言われて何故か喜ぶ矢央を、呆れて突っ込む永倉だった。
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