駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
第五話*恩人との再会
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桜の木に緑の葉が見え始めた五月初頭、新撰組にちょっとした騒動が起こり土方は頭を痛めていた。
「こうなる時が来るんじゃねぇかと、薄々分かっちゃいたんだがな……」
煙管を置き、部屋の入口付近で小さくなっている矢央を見て大きな溜め息。
「ありゃ―…俺達も気を配る必要があったんだ。 今回のことは、矢央は悪くねぇ」
「まあ、そうだな」
矢央の両隣に座り塞ぎ込む矢央を庇うのは永倉と、先程から目線を泳がせてばかりいる藤堂。
土方は藤堂を一瞥し、また煙管に手を伸ばした。
「やっぱり女湯も作るべきだったか」
先月、屯所に訪れた医者・松本の助言の通り、新撰組に風呂場が設けられたのだが、これがこの度の問題へと繋がる。
女中が帰った後、男達が風呂へ入り一番最後に風呂に入る矢央は、この日も最後に掃除がてら風呂へと入った。
週に一、二回しか銭湯に行けたなかった事を思えば、一番最後といえど毎日風呂に入れる喜びは大きい。
思わず鼻歌を奏でてしまう。
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